イネイト療法における基本的な考え

メジャーとマイナー

メジャー(主要なもの)とマイナー(副次的なもの)という考え方は、イネイト整体・むつう整体における哲学(カイロプラクティックから派生)の根幹的な部分です。東洋哲学的に言うと陰と陽という概念が近いかもしれません。

静的で目立ちにくい本質的なもの(陰)と動的で目立ちやすい周辺的なもの(陽)、例えば人生にとってお金というものは目的、主要なものではなく、より良い人生を送るための手段、副次的なものですが本末転倒してお金を手に入れることが人生の目的そのものになってしまう場合があります。

確かにお金は現代生活には必要なものですがいささか偏重気味なのが問題です。同様な事が限りなく社会では起こっています。企業の経済活動、教育の分野、スポーツ、医療、政治、その他の文化の面でも当初の目的から逸脱し、手段とか結果を重んじ本質を見失う事がむしろ当たり前になりつつあります。困った事ですが、皆でそのことに気付いていても知らない振り、

見えない振り、聞こえない振りをしているのが現状と思います。

もっと問題なのはそのような風潮のなかで育ってきた子供は何の疑いも無く真実でない事を真実だと思いこみます。結果、善悪、狂気正気の別さえあやふやになって未成年の犯罪が増えているのは、驚くべきこと、かつ嘆かわしい事です。

ひるがえって医療についても関係者こぞって結果を重視しすぎているように感じます。この場合の結果とは症状のことを言っています。もっと症状の奥にあるものに焦点を当てる必要がるのではないでしょうか?鍼灸医学では身体のエネルギールートを経絡と呼んでいます。経絡の経は縦という意味があります。経絡の絡は横と言う意味があります。つまり人体を縦横に走るエネルギールートです。

昨晩食べ過ぎて胃が重いと胃経絡が盛んに機能亢進状態を示します。そこで胃経絡の亢進を抑制する処置を施すと途端に胃の重さが解消します。その場所は大抵の場合足首から先の胃経絡のツボを刺激します。胃の近辺から遠く離れた場所を刺激して胃の状態を改善します。

一般の人にはとても不思議な現象に思えます。胃の近辺を刺激しても同様な結果を得られますが、むしろ迅速性、的確性に関しては遠く離れたエネルギールートのツボを刺激するほうが、より良い結果を生みます。これは対症療法です。しかし、胃経絡を用いずとも他の経絡を処置する事で症状の改善を見ることがあります。

例えばその人にとってそれが腎経絡だとしますと腎経絡が本質的な全ての病気の原因の経絡でメジャーです。胃経絡は今症状と連動しているマイナー経絡です。マイナー経絡は常に変動しますがメジャー経絡は不変です。生まれたときも10年前も今もメジャーの経絡は不変です。つまり、生来的な弱点の経絡です。それが腎経絡であれば胃の不調のとき(胃経絡の変動)も風邪や気管支炎(肺経絡の変動)のときも便通異常(大腸経絡の変動)のときも腎経絡の処置で改善します。これは原因療法です。同一人であれば一生涯同じ経絡の調整で全ての不調から脱する事が可能です。

メジャーとマイナー2

生来的に獲得した生命力を私たちはイネイトと呼んでいます。後天的に獲得したわけではなく生まれ持ってきた力です。同様に私たちは生来的に弱点も持って生まれてきていますが鍼灸医学の経絡的アプローチでは、生来的な弱点の経絡が存在しました。それをメジャーの経絡と呼びます。メジャーの経絡が全ての病気の原因と認識します。その経絡の特有の症状はありません。

私の研究では同一人では一生涯メジャーの経絡は変わりません。むつう整体では形態学的、神経学的アプローチで病気の原因に迫りました。そして、解明したのは全ての人の病気の原因は、上部頚椎の位置異常(ディスロケーション)であることです。(カイロプラクティックの発展者BJパーマーの研究成果)

つまり全ての病んでいる人は、静かで目立たない 上部頚椎の位置異常という弱点を持って生まれてきたわけです。これがメジャーです。上部頚椎位置異常特有の症状はありません。その結果補正作用として他の脊椎(せぼね)や骨盤が位置異常を起こしますが、それはマイナーです。マイナーは動的で活発に存在をアピールします。マイナーの存在に因って症状が発生します。腰痛症の人が骨盤の位置異常(マイナー)を矯正する事でそれが改善されれば、それは対症療法です。特に、特有の症状の無い上部頚椎の位置異常(メジャー)の矯正を行なって、骨盤が補正され腰痛が改善されればそれは原因療法です。イネイト整体・むつう整体ではメジャー(上部頚椎の位置異常)のみを、健康法の対象にします。メジャーの調整のみで全ての疾患に症状に対処します。後天的なマイナーを治療の対象とはしません。

メジャーとマイナー3

このメジャーとマイナーという考え方は私の治療家人生において大いなる衝撃を与えました。天動説が地動説に変わったくらいの衝撃です。この事を納得すると内なる自然の叡智、イネイトの存在を信じやすくなります。五感で感ずる事が出来ないイネイトの存在を信ずる事が出来れば、結果だけを重んじる対症療法から抜け出せます。世の中の医療は99.99999パーセント対症療法です。原因を追究している医療は殆ど皆無です。

何故にそうなったのか?現代科学の研究対象が五感で捉えられる世界、主に可視の世界を扱っています。特に医科学がそうです。原因(陰)は静かで目立ちませんが結果(陽)は目立ちます。全ての病気の原因であるイネイトの流れの停滞は、五感では感じにくい(陰)ですが、その結果である症状は痛みをはじめ、五感でハッキリ(陽)認識できます。ですから、患者さんはどうしても症状にこだわって、そこから一歩も抜け出せず症状の変化とともに心も揺れ動きます。

一般的に患者さんは症状を敵だと思っています。一秒でも早く症状からの解放を願っております。そこで、症状を、迅速に的確に取り除くように対症療法を行ないますと、人気の治療院になります。このメジャーとマイナーの項を読まれた方は、それが単なる慰安にしかならない事がお分かりです。

また原因療法のように健康度がアップしていく事は、決してありえないとお分かりでしょう。むしろ、健康度は確実に低下していきます。鎮痛剤で痛みをとる、血圧を薬でさげる、熱を下げる、下痢を止める、睡眠を薬で誘導する、消化剤を飲む、打撲の痛みに冷湿布やコールドスプレーをする、すべてイネイトの流れを低下させます。