終戦前、かつての日本人には循環という概念が定着していました。そうしたバランスのとれた生活が崩れたために、心身ともの健康が損なわれているのが現状です。
最近は食への関心がひろまり、さまざまな情報が氾濫しています。しかし、それは摂食という点に集約されて、摂食—消化—吸収—排泄(排便)という食の全体像の把握がなされていません。とくに問題になるのが排便への配慮が欠けていることです。食に関して、もっと排便という点に意を注ぐべきです。
水や空気に関しても、食べるもの同様に循環という視点で把える必要があります。わずか六十年前までは、地表は土で覆われていました。雨水が土に吸収されて地表をうるおし、土中に浸みこんだ水は、水蒸気となってふたたび天に還り循環が保たれていました。
いまや、都会地では地表のほとんどがコンクリートで固められてしまっていますから、水の循環を保つことは至難の業です。
そうした現状にあっても、できるだけ子どもたちを土のある所で遊ばせたり、大人も含めて土を踏みしめて歩く習慣をつけることが健康を保持するよすがになります。
空気については、優れた建築家宮本無茶思さんが提唱されている「呼吸する家」で生活することが望まれます。宮本さんは、呼吸する家の視点から「たての風」を身体で感ずることを進めています。わかりやすくいえば木造の通気性のある家で暮らすことが望ましいのです。
いまや、鉄骨・鉄筋の家が増えて通気性が妨げられていますが、極力、窓を開けたりすることで外気を家の中にとりいれていただきたいものです。
以上、循環する生活の大切さをしっかりと身につけて、心身ともの健康を守って頂きたいものと願っております。
(参考文献)
宮本無茶思 衣食住はその人の運命を左右する(文芸社) |