かつて、わが国は山紫水明の国といわれつづけてきました。終戦後60年あまり、いまや大気は清澄さを失い、水も汚染されてしまっています。
そのうち、大気汚染の一因として、花粉や車の排気ガスの影響などが挙げられています。そうはいっても、現代の社会生活から見て、車は生活必需品ともいえるでしょう。
しかし、あまりにも車に頼りすぎていないか重大な反省期にあると思います。不急不要の車の繁用は極力控えていただきたいのです。
大気汚染による健康被害について二点を挙げておきましょう。ひとつは花粉症です。当然のように花粉症の主因は花粉であると思われていますが実はそうではありません。どんなに花粉が飛散していてもそこに車の排気ガスが混入しなければ花粉症にはなりません。
それは、緑の多い僻地には花粉症は少なく緑の少ない高速道路の周辺に住んでいる人に花粉症が多いことからもわかります。
排気ガスについてもっと問題になるのは肺癌です。一般に肺癌の原因として、真っ先に煙草が挙げられていますが、肺癌の主因は煙草ではありません。肺癌に関して、煙草は排気ガスのスケープゴートにされているのです。
もちろん、煙草は喫わない方がいいのは当然です。煙草を喫うと血管が収縮しますから心臓の負担が大きくなり、さまざまな心臓疾患の誘因になります。つまり、煙草の悪影響は、肺よりも心臓の方が大きいのです。
冷静に考えればすぐにわかるはずです。室内で一服する煙草の煙と、交差点で撒き散らかされる車の排気ガスと、どちらが呼吸器への影響が大きいでしょうか。
同志社大学名誉教授の西岡一さんは、学生達に「交差点で信号待ちをしている時は、すべての車が通りすぎるま
では、息を吸ったり吐いたりしてはいけない」と話しておられます。私はこれを忠実に励行いたしております。 |