近年、年とともに高齢者が増えつづけ、総人口の20%を超えました。その反面、憂慮すべき現象が起きています。 昭和20年以前に生まれた60歳以上の人の寿命の延びにくらべて、
それ以降に生まれた60歳未満の人の寿命が短縮しているということです。その結果、生み出されてきたのが、私どもが以前から指摘してきた「逆さ仏(親が子どもの葬式を出す)」の増加です。原因ははっきりしています。終戦の年である昭和20年を境として、始めはアメリカ占領軍の政策、それを引き継いだわが国の行政や大企業の経済優先の姿勢によって、優れた伝統の日本文化が、衣食住すべての面で欧米化の一途を辿ってしまったからです。いまこそ、止まる事を知らない生活の欧米化から脱却して、日本文化を復活させてることによって、逆さ仏の増加をくいとめていただきたいのです。小児科医の立場からわが国の現状をみた時、逆さ仏の増加と共に取り上げなければならない問題が「少子化」です。
巷間、少子化の原因として、有配偶出産率の低下、電化製品・自動車などによる利便生活の追及、晩婚化の進行、既婚女性の就職率の上昇、学歴偏重の社会風潮、役割分担型家庭生活の変化、子育ての時間的・心理的・身体的・経済的負担感の増大などが挙げられています。しかし、もっとも重要な要因と考えられる食文化の急激な変化についてはほとんど眼が向けられていません。
実は、少子化の最大の原因は、栄養のとりすぎ、特に日本人には合わないパン・牛乳・乳製品など欧米食の過剰摂取にあります。ごはんと味噌汁に、野菜・海草・小魚の副菜という優れた日本伝統食文化を復権させることで、高齢者・少子化による偏った人口構成に歯止めをかけていただきたいものです。 |