わずか六十年ほど前まで、わが国は「山紫水明の国」と呼ばれ、水が清澄でおいしく保たれていました。
それが、年とともに水質が汚染し、敬称は過去のものになり下ってしまいました。
かつて、水質汚染には企業の工場廃水が大きく関わっていました。いまや、その主役は家庭の雑排水に変わってしまいました。
家庭雑排水の水質汚染の双璧としては、合成洗剤と油脂が挙げられます。ともに、早くからその過剰使用に警鐘が発せられていたにも関わらず、一向に改善のきざしが認められていません。
そうした現状にあって、少しでも水をおいしく飲むためにはどうすればよいでしょうか。
まず、朝の起きぬけの時には、三十秒間ぐらいは飲料水としては使用せず、洗い物用に使ってから飲んだ方が賢明です。
コップに汲んだ水を手に持って振ったり、マドラーで撹拌した後、五分ほど放置してから飲むのもよいでしょう。塩素には蒸発性がありますし、振ることはそれを増強します。
また、撹拌することによって、新鮮な空気をとり入れることができ、おいしさも増します。
きれいな木炭片を入れておくことも効果があります。炭には塩素を吸着してその害を減少させる働きがあるのです。
レモンを輪切りにして水に浮かべても、レモンの香りが塩素の匂いを消してくれます。
ただし、その際には国産のレモンを使うようにしましょう。やむをえず、輸入のレモンを使うときには、皮を厚めにむかなければなりません。輸入のレモンには、発癌性を持った殺虫剤や防かび剤が滲みこんでいるからです。
乳幼児や妊婦(胎児)のいる家庭では、信頼できる浄水器が入手できれば、それを使うことが望ましいと思います。
いずれにせよ、水質汚染の元凶となる合成洗剤の使用に歯止めをかけていただきたいものです。 |