自然食品、自然農法、自然出産、自然育児など、
自然という言葉を解した表現が眼につくようになってきました。 私どもが子どものころにはこうした表現はほとんどみられませんでした。生活自体が日本文化に則った自然のものだったからです。
いまはそれだけ日本人の生活が不自然なものになっている、
いわば、日本人として当たり前の生活ができなくなっているのです。おのずか
しか 老子は、自然を「自ら然り」といっています。生き物が、動物であれ、
植物であれ、それぞれにもっとも適した自然な生活を送ることが肝要なのです。ヒトはヒトなりに、
日本人は日本人なりに、アメリカ人はアメリカ人なりにおのずかしか「自ら然り」
の生活を続けていれば幸せな生涯を送ることができるはずです。 老子はさらに「無為自然」ともいって
います。
自分自身も、まわりの森羅万象に対してもできるだけ手を加えないことが大切です。 かつての日本人は、
衣食住全般にわたって自然に則した生活を送っていました。
衣類は通気性のある素材で作られた衣類を身につけていました。
住居は冷身暖身に徹していて、
冷暖房によって加工された空気は吸っていませんでした。 食べものは、
生き物だけを口にしていました。地場の、季節の、
加工していない食べものを食べることが、健康を保つ上でいかに大切か、
最近の医療費の高騰ぶりをみる時、痛切に感じます。 そして、
何よりも大切なことは、自然な生活をしている人間以外の動植物に、
人間中心の人工的な生活に起因する被害を及ぼさないようにすることです。 たった六十年間で、
これだけ自然環境を破壊してしまった現状にあって、終戦前の美しい日本を取り戻すのは容易ではありません。
しかし、それが僅かの間に自然を破壊してしまった私どもが成すべき、
万物に対する債務であると考えております。 |